「じゃあ、今週もよろしくお願いします」
ディレクターが先生と打合せを始めます。
その際に使う、真っ白なキューシートと真っ白な台本を準備して、手渡しします。
「コレが…コレです」
とっさに言葉が出ないことって、年を重ねるとありますよね。
すかさず、「年寄りみたいなこと言うね」と先生。
「コレがコレです」って。
「アレがアレよ」「何よ?」「アレか?」「ソレよ」
もう何が何だか分かりませんが、実際にそうなってしまうんだから仕方がありません。
すると、何を思ったのか、先生が言い出したのは、
「高木東六じゃなんじゃけぇ」
高木東六??? 誰それ? ディレクターは全く分かりません。
まあ、ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、一応書いておくと、
先生によると、高木東六さんは昭和の作曲家で、先生が子供の頃に見ていたテレビ番組「家族そろって歌合戦」の審査員を務めていた方だそうです。
その高木東六さんが「家族そろって歌合戦」の中で挨拶をされた際に必ず言っていたのが、
「それでは、ここで一句。松島や ああ松島や 松島や。高木東六です」という趣深いギャグ。
今となっては何が面白いのか、先生もディレクターも分かりませんし、
そもそも、「コレがコレです」から高木東六が出てくる先生の思考もよく分かりませんけど、
一つ言えるのは、保田先生は、アレがアレです。