まず、はじめに。
今月のこのコラム原稿を書き終えてから、今日、
小田嶋さんの訃報に接し、大変驚いています。
こころよりご冥福をお祈りします。
ボクが倒れてからもよく会いに来てくださいました。
かなしいです。
いまから紹介する本をボクに送ってくださったのが
最後のコンタクトになってしまいました。
この数日小田嶋さんのことをどうしているかな、痩せたよな、
とか考えていました。残念でなりません。
「東京四次元紀行」(小田嶋隆 著 イースト・プレス)を読んだ。
コラムニストの小田嶋さんが初めて書いた小説。
帯には「稀代のコラムニストがはじめて書いた最初で最後の東京物語」
と書かれている。おお!小説なのか!
コラムニストっていうのは真実を書く。
コラムニストが嘘を書くとコラムでなくなってしまうと、小田嶋さん。
小田嶋さんはコラムニストの中でも「ああ、小田嶋さんの文章だ」と、
読んでいてぐさっと刺さってくるそれ。
ボクの中で信頼できる数少ない物書きだ。
その小田嶋さんが、小説書いたんだ、ちょっと驚く。
同じ物書きでも小説家とコラムニストは対局にある、
そんな感じを勝手に持っていた。
けれど、ボクもまだ成し遂げていない領域だけど
小説に憧れがないわけではない。
いつそれを書くか?どう書くか?そう思っているうちに
病気になってしまった。
出版社にいる知人は
「これも機会かもしれない、今がチャンスかも、書いてみれば?」
なんて無責任なことを言っていたこともあった。
そこには踏み入れてはいけない聖域みたいに勝手に思っていた。
どんなの書いたんだろ?ドキドキ(笑)表紙を開くのが楽しみな本に
久々に出会った。
序文を読んでいると普通の小説というわけでもなさそうだ。
確かに小田嶋さんのコラムがそこにあるようにも見える。
東京生まれの小田嶋さん、23区を舞台にその物語は書かれていた。
街の中に置かれた人間をボクの頭の中に生き返らせるように描かれていた。
ああ、ここに生きるこの人たちの次の日も読んでみたいなあ、そう思った。
ボクの住んだことのある、大田区や新宿区、北区。
北区をちょっと紹介したいと思う。
住んだ事があるものにしかわからない河川敷に失業した青年、
これまたそこからちょっと離れた足立区からやってきた
猫を殺した中学生の少年
という設定が本当にあった話なんじゃないかと思わせるほどリアルに感じる。
あっという間にその場面は終わってしまうのだけど、
その場にいるかのように思わせる。
一場面一場面がボクの部屋にやってくる。