今月、ボクがずっと考えているのは
「死に方を決めるのは最後の自由か」という重いテーマ。
実は、鎌田義孝監督、金子清文主演の映画
『TOCKA(タスカー)』のサブタイトルなのだ。
死にたい男、金子が扮する章二が「殺してくれ」と
自殺サイトで知り合った菜葉菜扮する早紀に嘱託殺人を依頼する。
舞台は、北海道のオホーツク海沿岸にある町。
ロシア人相手に中古電気店を営んでいる章二の生活は
映し出されているだけでも胸のうちが嫌なもやもやした気持ちになる。
さらに、詐欺まがいの廃品回収会社に勤め、盗んだ灯油売り歩き
ようやく生活しているような、迷路に迷い込んでしまった若者、
幸人をいま人気上昇中の佐野弘樹が演じている。
この幸人をみていると、どうにかしてそこから抜け出すことはできないか、
やるせない気持ちがずっと残ってしまう。
「殺してくれ」のテーマの底に流れる社会のどうしょうもない世界。
できれば知りたくないような世界で暮らす人たち。
自分だっていつどうなるかなんてわからないという怖さ。
そんなものがボクをまず襲ってくる。
そんな中、章二は自分の選んだ死を迎えることができるのか?
この映画のパンフレットにボクもコラムを書いているのだけど、
人には「天命」というものがあって
「死にたい」と思ってもその場に魔物でも降りてこない限り、
人間臭さとか理性が一ミリでも残っていたら死ねないんじゃないか?
ましてや、もう自分の寿命は決まっていて
自分の自由になんてできないんじゃないかと思ってしまう。
生きていくってことは滑稽な事だ。
人間は考える葦ではあるけれど、
考え抜いてもそのように生きていけるか、死んでいけるかはわからない。
映画はいまのところ東京での上映、
渋谷ユーロスペース3月10日まで、が決まってる。
広島でも上映できるといいのだけれど。