出演:公益財団法人・中国労働衛生協会
宮田明 理事長
Q 福山市に本部を置く中国労働衛生協会は、
備後地域や岡山・鳥取を中心に、企業の健康診断など、
企業の活動を健康の面から支えられているんですよね?
⇒・尾道、岡山県津山、鳥取県米子・鳥取に検診所をおいて、
労働者の方が健康で安全に働ける職場環境などを整備することを
お手伝いすることを業務とする。
・健康診断や産業医活動、保健指導、健康教育等を行い、
最近は今日のお話の企業の健康経営支援、
そして地域にも目を向けて住民の健康増進・疾病予防にも注力。
Q 中国労働衛生協会では法人として自らも健康経営を実践。
ことし1月には広島県健康経営優良企業として、湯崎知事から表彰を受けた。
⇒・多くの地場の企業が健康経営を進めることにより元気になってほしい、
そのお手伝いをしたいという気持ちから健康経営の支援を開始。
そのためには自分のところが健康経営で社会的に評価されていないと
お客様から信頼されないであろうと思っていた。
今回、この表彰を受けたことで我々のブランド力も高まり
世間からの信頼性を高めたであろうと喜んでいる。
・地道にやって来た努力が評価されたので、
特に取り組んでいる職員達はもちろん嬉しい。
・ただ、まだまだ、この表彰が何のことかわからないまま
お祝いを言われることもあり、健康経営という概念が
まだまだ世の中に十分浸透していないなと感じたことも事実。
Q 一方で、「健康経営優良法人」という言葉を耳にする機会も増えた。
「健康経営」に対する考え方も変わってきているのでは?
⇒・健康経営はすでに次の段階に入って来ている。
もともとは従業員の高齢化などによる健康問題が
労働生産性を低下させることなどの課題に対し、
経営者が企業内で健康づくり事業を展開し、
従業員への健康教育によりヘルスリテラシーを高めることなどに投資し、
これにより企業の将来のリスク回避を図るというのが主たる目的だった。
・現在は考え方が深化して、企業経営における人の重要性に目を向けて、
人という資源を企業の価値創造力、競争力の源泉と考え、
新たなビジネスモデルを作りだす資本と考える、
難しい言葉で言うと、人という資源を資本化して、
自社を発展させることにより社会の成長と発展に寄与しようという
考え方に変化してきている。
従業員を人財と捉えてその資源を資本化しようという考え方、
人という資源を資本に転換するために投資を行うという考え方になってきている。
Q 健康経営に取り組む企業のレベルが上がってきたということ?
⇒レベルが上がって来ているというよりも、
国の方がそれを期待してハードルを上げてそれを促して来ているという感じ。
毎年、日本健康会議に健康経営度調査という申請書を提出するが、
その内容も、将来を先取りして毎年どんどん深化して行っている。
Qその中で、「健康経営優良法人」の認定、こちらは毎年更新されるものですが、
中国労働衛生協会は2023の大規模法人部門でも、引き続き取り組みが認められ、
全国の500位以内に与えられる称号「ホワイト500」にも認定された。
毎年、毎年の申請に合わせて見直し、アップデートしていくことが大切なんでしょうね?
⇒単に優良法人を取るのを目的とせずに、この健康経営度調査表を作成することを、
自社が健康経営を行うための手段、ツールと考え、
自社の理念・方針に沿って、どんな課題を解決すべきか、
そのために何を実行するか、そしてそれをどのように社内に浸透させるかを、
自社なりに考えることから始めていくわけですが、
そのストーリーがしっかりできていた時、
初めて健康経営優良法人に認定されることに意味があると思う。
Q ちなみに今回はどんな課題に重点的に取り組まれたのでしょうか?
⇒・我々の解決したい経営課題は
「心身ともに健全な職員による業務のパーフォーマンス向上」。
・職員の高齢化等によるパーフォーマンスの低下があるので、
まず職員の運動機会の創出、運動習慣の定着に力を入れた。
・職場は女性の比率が高いのが特徴。女性には女性特有の健康課題がある。
それについて男性を含めた全職員間に周知を図ることに努めた。
・業務の効率化に努めるため、研修会で好事例を発表し共有するなどして、
職員の意識を高めることにも取り組む。
Q 中国労働衛生協会では健康経営のサポートにも力を入れておられますよね。
⇒・現在全31社、広島県東部では26社と健康経営の支援契約を結んで、
健康経営のお手伝いを行う。
・健康経営エキスパートアドバイザーの資格を保健師中心に
16名が取得しており、企業に出向いて活躍。
Q 健康経営をうまく取り入れていくためにどんなことが大切?
⇒・健康経営優良法人に認定されることはあくまで健康経営実践の手段と考えるべき。
実際には、そのために提出する健康経営度調査に沿って体制つくりを進め、
施策を実行して行くのが良いと思う。
・支援事業を始めて約2年。スタッフには色々なノウハウが蓄積されて、
各企業にカスタマイズしたより有効な支援ができると自負。
まだ余力があるので、健康経営にご興味をお持ちの方は是非
中国労働衛生協会をご利用いただきたい。
出演:全国健康保険協会広島支部企画総務グループ
可部 礼奈さん
Q 協会けんぽ広島支部では県内で健康経営を広めるために、
「ひろしま企業健康宣言」制度を展開。
この制度をスタートされて、変化を感じますか?
⇒・「ひろしま企業健康宣言」は会社の経営者自らが、
従業員の健康づくりに率先して取り組むことを社内外に宣言していただき、
健康づくりに取り組んでいただく事業。
開始して8年目になるが、令和5年3月において、
ひろしま企業健康宣言エントリー事業所数が「4,000社」を突破。
・年々、飛躍的に増加し、昨年度は1年間で約1,000社がエントリー。
県内に「健康経営」の意識が浸透している。
大切な従業員は会社の人財。
新型コロナウイルス感染症の長期化で従業員の健康被害や精神的ストレスが高まり、
会社での健康づくりの重要性が高まっていると感じる。
Q それぞれの事業所の健康経営に対する取り組みのレベルも
上がっているそうですね?
⇒・協会けんぽ広島支部では、
毎年、ひろしま企業健康宣言エントリー事業所に対して、
1年間の健康経営の取組状況に関するチェックシートをお送りし、
健康経営の取組状況を振り返っていただいている。
チェックシートの取組状況に基づき、認定基準を充足された事業所を得点に応じて、
3段階(ゴールド・シルバー・ブロンズ)で「健康づくり優良事業所」として認定。
・今年度は、8月21日に「令和5年度 健康づくり優良事業所」に
認定した事業所は1,752社。
これは前年度の1.2倍で年々飛躍的に増加している。
Q ことしの協会けんぽ広島支部の調査で、
改めて健康経営の効果が明らかになったそうですね?
⇒・協会けんぽ広島支部では、保有する医療費・健診データの分析や
健康経営の取組状況について事業所からアンケートに協力いただき、
データから健康経営の効果などの分析。
・健康経営に積極的に取り組んでいる会社ほど、
従業員の医療費の節減、会社を退職する方が少ないなどが明らかに。
Q 具体的にはどのくらい違ったんですか?
⇒①従業員(被保険者)の一人当たり年間医療費(令和3年度)は、
広島支部全体の平均が18万8877円。
それに対して、健康経営優良法人2023認定法人では16万8675円。
★およそ2万円もの差。
②特に退職が多い10代・20代における退職者の割合は、
広島支部全体が19.5%。
それに対して、健康経営優良法人2023認定法人では、14.6%、
令和4年度の健康づくり優良事業所のうち、
最も認定基準を満たした5つ星(ゴールド)事業所に絞ると、
12.2%で7.3%もの差があった。
Q すでに健康経営に取り組んでいる企業が次のステップとして目指すのは、
経済産業省などの「健康経営優良法人」の認定ですが、
今頃が申請の時期なんですよね?
⇒・8月21日から経済産業省の「健康経営優良法人2024」の受付が開始された。
全国、約17,000社の会社が取得している今注目の認定制度。
・健康経営優良法人の申請に費用の負担があるが、
従業員の健康づくりに積極的な会社として「全国」に
アピールすることができ、十分な価値がある。
Q 協会けんぽ広島では、健康経営優良法人の申請に、
ぴったりなサポートがあるそうですね。
⇒ ・広島支部では、オリジナルで作成した
「健康経営優良法人サポートブック2024」を
ひろしま企業健康宣言事業所に配布し、申請のサポートを行っている。
・各項目の取組みや申請書の入力ポイントを解説しており、
サポートブックは広島支部のホームページに掲載しているので、
ぜひ、認定に向けて参考にしてほしい。
Q 最後に可部さんからお伝えしたいことがあればお願いします。
⇒・協会けんぽ広島支部では、「健康づくりの好循環」の定着を目指している。
・「健康づくりの好循環」とは、加入者の皆様が、年に一度必ず健診を受ける。
その結果により保健指導を受けたり、
症状が軽いうちに早めの医療機関に受診する。
そうすれば、皆様が健康度を高め、健康寿命の延伸を実現できる、
というサイクルのこと。
・健康づくりの好循環を定着させ、社内の従業員全員が、
健康で生き生きと働き続けられる状況・環境を目指し、
必ず年に1回健診受診を。
出演:広島市健康推進課 保健師 前川 優希さん
Q 熱中症は暑さや湿気に私たちの体が適応できなくて生じているもの?
⇒その通りです。
そのため、熱中症は予防法を知り、実践することで
ある程度防ぐことができる。
昨年の5月から9月の間に全国で熱中症により
救急搬送された人の数は7万人をこえた。
重症化すると死亡につながることもあるので、
予防することがとても大切。
Q 熱中症は程度によって症状が違ってくる?
⇒日本救急医学会では熱中症の重症度を1度~3度に分類。
・1度:めまい、立ち眩み、筋肉のこむら返り、手足のしびれなど
現場での応急処置で対応できる軽症。
・2度:頭痛、吐き気、体がだるいなど
病院への搬送を必要とする中等症。
・3度:まっすぐ歩けない、意識障害、けいれんなどの
入院して集中治療の必要がある重症。
Q 仕事によって、どんな熱中症対策がとれるかかわってきそう
⇒厚生労働省が公表している「熱中症の業種別発生状況」によると、
建設業、製造業、運送業の順に熱中症の発生が多いことが分かっている。
屋外での作業がある場合は、必ず帽子をかぶり、
可能であれば作業場所に簡易な屋根を設けるなど
直射日光や照り返しを遮るようにすることが大切。
また、屋内外ともに、作業時間を短くして、
定期的に休憩時間を確保するようにしてください。
休憩場所では、体を冷やせるようにしたり、
こまめに水分・塩分の補給ができる体制づくりも重要。
Q 自宅で仕事をする方も注意は必要?
⇒熱中症は屋内にいても発症する。
屋内での熱中症による死亡者のうち、
約9割の方がエアコンを使用していなかったことが
明らかになっている。
室内では、ブラインドやすだれなどで直射日光を遮り、
エアコンなどの空調設備を利用しましょう。
とにかくこまめな水分補給を心がけてください。
1日当たり1.2リットルの水分補給が目安となっていますが、
発汗量に見合った量の水分の摂取が必要。
また、睡眠時や入浴時にも汗をかくため、
起床時や入浴前後は水分を摂取する必要がある。
Q 日頃の体調管理も大切?
⇒寝不足や二日酔い、風邪などの体調不良時は特に熱中症になりやすい。
万全ではない体調のまま暑い環境に行くことは避けてほしい。
風邪等で発熱したり、下痢になったりしている場合は
脱水のリスクが高くなる。
水分補給、温度・湿度の調整、バランスの良い食事をとることや
睡眠をとるなど日々の健康な体づくりが熱中症の予防にもつながる。
Q まわりの人が熱中症になってしまった際は、
どのように対応したらよい?
⇒応急処置としては、涼しい場所へ避難し服を緩め、体を冷やす。
氷のうや保冷剤、冷えたペットボトルなどで首筋や脇の下、
足の付け根など太い血管が通っている部位を冷やすと効果的。
呼びかけに反応し、水分を自力で摂取できる場合は水分補給をしてください。
胃の表面から体を冷やしてくれるため、冷たい飲み物がおすすめ。
大量に発汗があった場合には、汗で失われた塩分も適切に補える
イオン飲料やスポーツドリンク等が最適。
Q 呼びかけへの反応が鈍い場合や症状が良くならない場合は注意が必要?
⇒そんな時は無理に水を飲ませないようにしましょう。
以上の対応をしても、症状が良くならない場合には医療機関を受診してください。
症状が良くなっても休息をとり、回復したら帰宅し安静にするようにしましょう。
声をかけても反応がないなど症状の重い場合はすぐに救急車を呼んでください。
Q 知識を持っていても、自分では異変に気付きにくいところもありますし、
お互いの声掛けを大切にしたいですね。
⇒お仕事など作業をされているときに、
少しでも異変を感じたら、必ず作業を離れて、
涼しい場所での休息や水分補給などの対策をとっていただきたい。
熱中症のリスクが特に高いお子さんや、高齢者の方が近くにおられる場合は、
冷房を使用しているか、水分をとっているか、無理をしていないか、
と気にかけていただきたい。
みんなで声をかけあって、安全に夏を過ごしていただければと思います。
出演:明治安田生命保険相互会社 理事・
広島支社長 武岡 志郎さん
Q 明治安田生命は、「明治生命」と「安田生命」の
2つの生命保険会社が合併して誕生した会社?
⇒・ともに明治初期に設立された日本で最も「歴史と伝統」のある生命保険会社。
その2社が2004年に合併して誕生した、21世紀生まれの「若々しい」生命保険会社。
・創業以来当社は、相互扶助精神のもと、
生命保険事業のパイオニアとして、お客さまそして地域社会を支えてきました。
・「確かな安心を、いつまでも」お届けするため、
企業ビジョン「信頼を得て選ばれ続ける、人に一番やさしい生命保険会社」
の実現をめざしている。
Q 明治安田生命は、7年連続で、健康経営優良法人に認定。
⇒・グループ会社においては2社が「健康経営優良法人(大規模法人部門)」、
9社が「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」に認定されました。
Q 健康経営を推進するために、今どんな取り組みに力を入れている?
⇒「健康を「知る」「つくる」「続ける」」の土台となる新たな取り組みとして、
一人ひとりの健康診断結果や問診結果に基づく科学的なアプローチを取り入れた
「健康科学プログラム」を展開。
「健康年齢」という新たな指標を軸に、
4つの取り組みの継続的な実践を通じて健康改善に取り組む。
Q 具体的にはどんな内容?
⇒①健康年齢:毎年の健康診断結果や問診結果に基づき算出される
「健康年齢」と同世代における「健康順位」を確認。
自身の健康状態を把握。
②MY健活アドバイス:従業員専用スマートフォンアプリに提供される
一人一人の健康課題を踏まえたアドバイスを毎日実践。
③みんなの健活ポイント:MY健活アドバイスを毎日実践し、
福利厚生サービスサイト内で利用可能なポイントを獲得。
④健康年齢シミュレーション:
MY健活アドバイスの実践状況を踏まえた
将来の健康年齢のシミュレーション結果を提供。
Q 健康経営に力を入れておられる明治安田生命では、
お客様や地域のかたの健康づくりをサポートする
「みんなの健活プロジェクト」も展開しているそうですね。
⇒「みんなの健活プロジェクト」は
「お客さま」「地域社会」「働く仲間」の健康増進を
継続的に応援する取組みです。
ひとりでは続けにくい健康づくりに当社が寄り添い、
一緒に取り組むことで、お客さまや地域のみなさまの
心身の健康に貢献することをめざしています。
Q 具体的にはどんな取り組みをされているのでしょうか?
⇒・広島市をはじめ、様々な自治体様と地域課題の解決をテーマとした
連携協定を締結させていただいたり、
当社従業員が公民館で健康に役立つ講座を開いたり、
道の駅やお祭りで健康増進イベントを実施するなど、
地域イベントへ積極的に参加させていただいている。
・当社従業員の心身の健康づくりも重要な取組みであると考え、
従業員の健康づくりに積極的に関わり、
健康増進の取組みを推進するため「MY健康宣言」を策定したり、
「健康科学プログラム」を展開している。
Q 今後、地域に向けてどのような活動をしていきたい?
⇒健康づくりへの支援や、豊かな地域社会づくりをサポートする、
社会貢献型の活動を展開することで、地域のみなさまの発展に貢献していく。
地元企業のみなさまに対しては、協会けんぽ広島支部で取り組む
「ひろしま企業健康宣言」のご案内や、
当社の健康経営に関する知見やノウハウを活かした
「明治安田 健康経営認定支援サービス」を提供するなど、
健康経営を地域全体に広める活動を継続していく。
私たちはこれまでも、これからも、ひとに健康を、
まちに元気をお届けします。