出演:一般社団法人ヘルスケアマネジメント協会
代表理事 振本恵子さん
【以下、質問】
Q すでに会社で従業員の健康についてできることは取り組んでいるから、
わざわざ健康経営を始めなくていいんじゃないの、という声も耳にする。
改めて、健康経営を導入する理由、メリットとは?
⇒企業がどこを目標にしているのかによる。
法令順守や健康づくりで終わっていないか。
健康経営は、健康課題の解決で経営課題を解決につながる、
成果まで考えた手法で、経営戦略!!
メリットは経営戦略になること、
ゴールを設定して、逆算して成果目標を立てるのが重要。
例)従業員満足度向上や望まない離職率ゼロを目標するなら、
逆算して計画をたてること。施策ありきで終わらない
Q 逆算して計画を立てるとありますが、具体的に言うと?
⇒会社の経営課題が従業員の方の体調不良や病気欠勤などをなくして
望まない離職者をゼロにする、
労働力確保していきいきとした職場を作るというゴール設定をすれば、
逆算した成果目標は離職者・休職者をゼロにすること。
生活習慣病のリスクがあるのであれば、健康診断の所見がある人を減らしていく。
リスクがある人は保健指導を徹底しよう。
そのためにはまず全員受診を。
相談いただく方は、施策ありきでスタートしているところが多い。
まずは目標設定が大切!計画立てて1年、2年やっていくこと。
Q 実際の導入企業はどんなきっかけで健康経営を始めている?
⇒経営者からのSOSの声が多い。一番の悩みは人!
従業員の不調や休職対応相談から、従業員の満足度を高めたいなど。
Q 健康経営を導入するときには、まず何から始めたらよい?
⇒先ずはトップ宣言。
経営者自らが、自社あげて従業員の健康管理を
会社をあげてやるんだという強いメッセージが大切。
→解決したい経営課題の抽出、
対策を周知していく。
Q 実際に健康経営を進めていくためどんな人材を充てればいい?
⇒担当者は健康管理の実務者(衛生推進者や管理者、総務労務部など)がよい。
Q 外部のサポートは?
⇒健康管理は難しいので、外部のサポートを受けるなら、
保険者のサポートや、当協会のような産業保健スタッフ、
社労士などの力を借りるといい。
Q 担当者が決まり組織体制も整えたら、次は何に取り組む?
⇒健康課題の見える化が必要。
不調や休職はフィジカルとメンタル疾患とどちらが多いかを調べる。
Q どうやって見分けるか?
⇒フィジカル:健診結果所見率多、所見項目の特徴など、
メンタル:ストレスチェック実施結果、高ストレス者率、集団分析結果、
ハラスメント体質になっていないか
Q 業種で違いは?
⇒・フィジカル疾患(生活習慣病から心臓病や脳血管疾患リスク)は、
土木建築業・運輸業健診所見率高
・メンタル疾患はIT業(1ヶ月休業率トップ)、
医療福祉業(精神疾患の労災申請1位)
Q 健康経営をうまく進めていく上で、大切なことは?
⇒自身や社員様の健康のために重要なんだとやりがいを持ってほしい、
スモールステップで
Q 健康経営について詳しくききたい場合は?
⇒「ヘルスケアマネジメント協会」で検索を!
メールアドレス: info@hecm.jp
出演:独立行政法人 労働者健康安全機構
広島産業保健総合支援センター
寺村 清美さん
Q 寺村さんがお勤めの「産業保健総合支援センター」とは?
⇒働く人の、こころも身体も健康でいられるように、
企業の担当者の方や、お勤めになられている方からの
電話やメールで相談を受けたり、
事業場へ訪問させてもらいアドバイスを無料で行っている
独立行政法人が運営している機関。
人事労務の方々や、産業医や衛生管理者さんをはじめとする
企業内で健康づくりを支援しているスタッフの方々に、
年間を通して、各種セミナーを開催。
Q 女性特有の体の悩み、特に月経痛を抱えているという方も
少なくないですよね?
⇒厚生労働省が発表しているデータでは、
月経痛を抱えている20 代は、64.2%、30 代は 51.8%
月経痛で受診した女性のうち、
子宮内膜症や子宮筋腫等、何等かの病気を原因とする
月経困難症の割合は、20 代で3割、30 代で5割、40 代で7割。
働く女性の半数弱は、月経異常を感じても婦人科等を受診しない。
ほとんどの中高生女子は、月経痛やPMS(月経前症候群)と言われる、
月経がくる前におこる不快な症状のために
生活に支障が出るような状態でも婦人科等に行かない。
Q 放っておくと将来的に大きな病気につながる可能性もありますし、
将来の妊娠・出産を考えたときに、早めのケアは大切では?
⇒ひどい月経痛などが毎回続くということは、
不妊症や卵巣がんになるリスクがあると言うことを理解してほしい。
子宮内膜症や子宮筋腫といった病気を、
妊娠希望の有無に関わらず、若い世代からしっかり理解して、
健康に関して知識をつけておくこと、
ヘルスリテラシーを上げておくことが大事。
女性同士で話し合うことも、日本人は、あまりしない。
婦人科系統の病気は、何だか恥ずかしくて、
口に出さない国民性があるが、口にしづらいではなく、
相談してみよう、大事には至らないならそれはそれでよいから
とりあえず病院に行って診てもらおう、と思うことが必要。
若い世代から、婦人科受診のハードルを下げる対策が必要。
Q 一方で、周囲や職場も女性特有の健康問題について
知っておくことは大切ですね。
⇒男性のホルモンには周期はなく、
年齢と共に緩やかに低下する傾向があるが、
女性は、一生を通じてホルモンは劇的に変化する。
そういうホルモンの違いが男女にあるということを会社全体が理解し、
女性ならではの身体の特徴に対する相互理解と歩み寄りが大事。
女性がキャリアを探索し確立させていくライフステージにおいては、
ホルモン分泌の変化は激しく、
月経前症候群や月経困難症で悩みながら働いている。
キャリアを維持する頃のライフステージでは、
ほてりや疲労感など、更年期障害等の始まりと重なるため、
仕事のパフォーマンスを維持しようとしていると状態であることを、
周囲が理解することが必要。
また、出社しても健康な時と比べて
仕事のパフォーマンスが半分以下になると感じている女性は多く、
その割合は約65%。
PMSのせいで自信を失い、昇進を断ったことがあると答えた女性が
17%と言う調査も。
Q 職場ではどんなサポート体制や取り組みをしていけばいい?
⇒月経困難症をはじめ、女性特有の健康問題に悩む女性労働者に対して、
例えば婦人科等を受診する場合、職場の配慮が重要。
労働基準法では、正社員やパート、アルバイトなど雇用形態に関わらず、
生理日の就業が著しく困難な女性に対して、生理休暇の取得を認めている。
生理休暇は、法律によって全ての企業に義務付けされた制度であるが、
認知度も低く、取得率がかなり低い状況で、
請求した女性労働者の割合は1%程度。
その背景には、「仕事が忙しく休める雰囲気ではない」
「男性の多い職場では申し出しにくい、辛さを理解してもらえない」など
さまざまな事情。
生理は女性にとって非常にデリケートな問題であり、
症状や考え方も一人一人違って当然であるため、
企業側が配慮する姿勢が重要。
上司に相談しやすい相談体制を作る必要がある。
企業の中の相談担当者を女性も配置するというのも一つ。
先ほどの、「生理休暇」の名称だと取り辛いので、名称変更も一つ。
当機構では、「ヘルスケア休暇」と変更しました。
ただなかなかすぐにとはならないと思うので、
まずは衛生管理者等に対して女性特有の健康課題の理解を深め
知見向上を図ることも一つ。
より専門的な相談体制づくりも支援策の一つ。
Q 女性の健康問題を学べるような場所、あるいは相談できる場所は?
⇒女性の健康問題を考えるセミナーを用意している。詳細はHPで。
職員研修で女性の健康課題を取り上げるのも一つ。
講師の派遣は当センターで。
働く女性の相談ニーズにも対応するために、
個別相談をメールでも受け付けている。
産業保健総合支援センターと、女性健康支援センターや
不妊専門相談センターとの連携強化を図るために、
連携コーディネーターを配置。
私が、助産師の資格も生かしながら、コーディネーターとして
相談連携や支援できれば。是非ご相談を。
Q 女性が働きやすい職場を作ることが
結果的にみんなが働きやすい職場づくりにつながりそうですね。
⇒改正育児・介護休業法も、4月1日一部施行されましたし、
10月1日からは、産後パパ育休(出生時育児休業)が創設され、
育休とは別に、取得可能となる予定です。(育児休業の分割取得)
男女が希望どおり働ける社会づくりにむけて、
ライフスタイルに応じた女性の健康づくりの推進は
健康経営の促進につながりますね。
出演:広島市歯科医師会理事 石田一輝先生
Q 噛み合わせの問題とは具体的にどんな種類がありますか?
⇒いくつかありますが、
① 上の前歯が前に突き出している上顎前突(じょうがくぜんとつ)=出っ歯
② 下の歯が上の歯より外側にある反対咬合(はんたいこうごう)=受け口
③ 歯がガタガタに並んでしまっている叢生(そうせい)
④ 前歯が嚙み合わず、奥歯でしか噛めない開咬(かいこう)など
Q 噛みあわせの問題を放っておくと、どんな影響がある?
⇒いろいろな問題が起こり得ります。
①歯磨きがしにくいため、むし歯や歯周病になりやすい。
②しっかり噛めない場合、丸飲みしたり、逆になかなか飲み込めない。
③その他、顎の関節に負担がかかったり、
子どもの場合ですとお顔が歪んで成長してしまう。
などの問題が起こる可能性があります。
Q そもそもなぜ噛み合わせの問題はおきるのでしょう?
⇒ご両親とお顔が似るのと同様に、
歯並びを受け継いでいることが多い。
それ以外にも、例えば子どもの頃の指しゃぶり、
いつも口を開いている口呼吸も歯並びに問題が出やすい。
また、よく頬杖をついていることなども原因となることがある。
Q 噛み合わせの治療方法には一般的にどんなものがある?
どのくらい期間や金額がかかるもの?
⇒嚙み合わせの治療はまず検査をして、
それぞれの治療計画を立ててから治療に入る。
治療方法、期間、金額は症状や始める時期によって
大きく異なる。
治療方法に関してはワイヤーを使ったりとか
マウスピースで治していくこともある。
期間は早くて数か月、一般的には数年かかることが多い。
保険が効きませんので金額は歯科医院によって異なる。
かかりつけの歯科医院でご相談いただくのが良いかと思う。
Q 噛み合わせの治療をする場合、歯を抜くことになるのでしょうか?
⇒嚙み合わせの問題は
歯の大きさと顎の大きさのアンバランスによって起こることがある。
子どもの場合だと、時期にも依るが、
顎のサイズを広げたりなどの顎の形を整える方法がある。
しかし、既にもう大人であったり、子どもの場合でも顎が小さすぎる、
また、歯が大きすぎて綺麗に顎におさまらないという方は
歯を数本抜いて並べたりですとか、
歯を少しずつ削って並べなおすことなどがあり得る。
Q 噛み合わせが気になる場合、いつから治療を始めるべきなのでしょうか?
⇒ケースによって、しばらく待って良い場合もありますし、
逆になるべく早く治療が必要な場合など症状によって異なる。
迷った場合はとりあえずかかりつけ医に
相談だけでもしてみることをお勧めします。
Q 大人になって、かみ合わせが気になる場合、
そこから治療しても間に合う?
⇒大人になってからも治療は可能。
しかし、年齢を重ねることで歯が動きにくくなることが多く、
治療期間が長くなる可能性がある。
また、歯周病をお持ちの方は、
歯を動かすことで悪化してしまうこともある。
ですので、こちらに関しましても、
かかりつけの歯科医院でよくご相談を。
Q 最後に石田先生から伝えたいことは?
⇒基本的なことにはなりますが、
小さい頃から食事はお口を閉じながら
しっかり30回噛んで飲みこむこと。
その他、姿勢を正し、お口を閉じて口呼吸ではなく
鼻呼吸を意識することも大事。
これらを習慣づけると咬み合わせが良い子に育ちやすい。
株式会社フレスタホールディングス 執行役員
グループ管理本部 本部長・渡辺 裕治さん
Q 健康経営に力をいれるきっかけになる出来事とは?
⇒定年間際の人が病気になって後遺症が残ったケースがあった。
余生は長いので元気に過ごしてほしいという思いがあった。
スーパーとしてみても、従業員に元気がないと鮮度感も出ない。
Q フレスタでは「健康」をコンセプトに、様々な取り組みを行われている。
中でも禁煙対策には力を入れておられるそうですが?
⇒禁煙といっても完全にやめなさいという指示をしているわけではない。
食品に鮮度感がよくなるように、元気がでるように、
勤務時間はやめようということで組合と話し合いを持ち、取り組んだ。
Q 喫煙者の従業員から反発などなかった?
⇒3割程度喫煙者がいた。
当時は喫煙の場がコミュニケーションや
休憩の場になっていたのは事実。
一筋縄ではいかなかったが、健康経営は会社でやるものということで納得してもらった。
Q どうやって説得?
⇒喫煙者の従業員が売り場を通ると、
タバコを吸わない人にとっては匂いが気になるもの。
また、喫煙者が休憩に頻繁に入るので不公平感もあった。
そこで、出勤中はやめようということになった。
Q 従業員に禁煙に踏み切ってもらうサポートもしていたということですが?
⇒禁煙する大変さは、かつて自分も喫煙者だったので、
自分自身も身をもって感じたことがある。
禁煙外来・ニコチンガム・ニコチンパッチを予約・購入、
半年以内に禁煙したら一部を会社が補助。
Q 女性の従業員の方の健康についても取り組みもされているということですが?
⇒女性従業員が7~8割。
働き盛りの30代から乳がんなどになることも。
女性のみ人間ドック健診を35歳からに前倒し。
ピンクリボンアドバイザー制度も。
女性の生理的に起こることを医師に講習してもらい、管理職が理解する取組も。
理解することで、結果的に関係性もよくなる。
今期からは「みんなが、スマイルプロジェクト」を立ち上げ、
部長職から新入社員までメンバーに入り、
誰でもが働きやすい環境を従業員時自身が考える取り組みをしている。
Q 健康経営に取り組んで、感じられる変化は?
⇒すぐには結果が出ないが、
採用面で、フレスタが健康経営をやっているから入社したい
という学生が増えた。
結果としてお店が続き、周りの人の健康寿命が延びれば
やっている意味があると感じている。
Q 今後、フレスタの健康経営で力を入れていきたいことは?
⇒フレスタのもうひとつのコンセプトは
「健康的なまちづくり(=フレスタウン)」。
病院やジムなど、健康づくりにつながる専門家と市民をつなぎ、
さらに街を健康にする取り組みを進めていきたい。
その結果として、フレスタを人が集う場所にしていきたい。
Q最後に、健康経営を続けるうえで大切なことは?
⇒健康はすべてのベース。従業員にまずはそう思ってほしい。
健康であることはずっと続けられること。
今後も継続的に町の人が元気で健康でいられる取り組みを続けていきたい。