出演:慶應義塾大学名誉教授
株式会社オトリンク 代表取締役社長 小川 郁先生
Q ヘッドフォン難聴とはどんなもの?
⇒大きな音にさらされることで起こる難聴を
「騒音性難聴」あるいは「音響性難聴(音響外傷)」という。
・「騒音性難聴」:主に、職場で工場の機械音や工事音などの騒音にさらされることで起こる。
・「音響性難聴」:爆発音あるいはコンサート・ライブ会場などの大音響などにさらされるほか、
ヘッドホンやイヤホンで大きな音を聞き続けることによって起こる。
=「ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)」。近年、特に問題視されている。
Q どんな症状?
⇒・「ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)」は、
じわじわと進行し、少しずつ両方の耳の聞こえが悪くなっていくため、
初期には難聴を自覚しにくいことが特徴。
・他の症状として、耳閉感(耳が詰まった感じ)や耳鳴りを伴う場合がある。
Q ヘッドフォン難聴の原因とは?
⇒・耳から入った音は、内耳の蝸牛という器官にある
「有毛細胞」という細胞で振動から電気信号に変換され、
脳に伝わることで聞こえるようになる。
しかし、自動車の騒音程度である85dB(デシベル)以上の音を聞く場合、
音の大きさと聞いている時間に比例して、有毛細胞が傷つき、壊れてしまう。
有毛細胞が壊れると、音を感じ取りにくくなり、難聴を引き起こす。
・WHOでは、80dBで1週間当たり40時間以上、
98dBで1週間当たり75分以上聞き続けると、難聴の危険があるとしている。
・100dB以上の大音響では急に難聴が生じることもある。
★特にヘッドホンやイヤホンは耳の中に直接音が入るため、
周囲に音漏れするほどの大きな音で聞いていたり、
長時間聞き続けたりすると、難聴が起こる。
Q どんな人がなりやすい?リスクが高い人を教えてください。
⇒・WHO(世界保健機関)では、11億人もの世界の若者たち(12~35歳)が、
携帯型音楽プレーヤーやスマートフォンなどによる
音響性難聴のリスクにさらされているとして警鐘を鳴らしている。
・生活習慣病を持っている方もリスクは高くなる。
内耳は極めて小さな器官で、内耳を栄養する血管も極めて細いため
血液が粘稠になる糖尿病や脂質異常症では内耳が傷みやすくなります。
Q 最近、ヘッドフォンを使う機会が増えている印象があります。
小川先生の印象として、最近、何か変化を感じられることはありますか?
⇒・何といっても新型コロナウイルス感染拡大のため、
リモートで会議などを行うことが増えたこと、
また、電車の中でも会話がしにくい環境になり、
ヘッドフォンで音楽聴取をする時間が長くなっている印象。
・地下鉄などの電車でも窓を開放するようになっており、
車内騒音レベルが高くなり、ヘッドフォンの音量を上げてしまう
傾向にあるのが気になる。
Q 気になる症状が出たとき、どうしたらいい? 治療したら治るもの?
⇒・有毛細胞が壊れる前であれば、耳の安静を図ることで回復する。
そのため、初期には耳栓を使う、定期的に耳を休ませるといった指導が行われる。
・大音響などを聞いたあとに急に耳の聞こえが悪くなったときは、
突発性難聴の場合と同様に、内服や点滴のステロイド剤による薬物療法が中心になる。
・ただし、これらを行っても聴力が十分に改善しないこともある。
・重症化すると聴力の回復が難しいため、そのような耳の違和感に気づいたら早めの受診が大切。
Q ヘッドフォン難聴にならないために必要な注意点・予防法とは?
⇒生活用品でも電化製品でも酷使すれば早く傷みます。
耳も同じですが、有毛細胞をはじめとする内耳細胞は再生力がないため、
一旦、壊れると元には戻りません。
1 音量を下げたり、連続して聞かずに休憩を挟んだりする。
80dBで1週間当たり40時間以下が目安。常識的な音圧では1日6時間以内にしよう。
②大きな音での音楽聴取が好きな場合、できれば聴取を1日1時間未満に制限する
③周囲の騒音を低減する「ノイズキャンセリング機能」のついたヘッドホン・イヤホンを選ぶ
Q 最後に、ラジオをお聴きの皆さんにお伝えしたいことは?
⇒男性で人生90年、女性では100年時代を迎えています。
豊かな長寿人生を楽しむためには感覚器は重要。
50年〜60年後を予測して今から予防できることは予防しましょう。