出演:
公益財団法人・中国労働衛生協会 理事長
(日本禁煙学会専門指導医)宮田明さん
Q.加熱式タバコとはそもそもどんなもの?
⇒タバコ葉やタバコ葉を加工したものを、
燃焼させずに電気的に加熱し、ニコチンを霧状化して他の化学物質と一緒に
蒸気として吸入するタイプのタバコ製品。
タバコの葉を使用しているため、
日本特有の「たばこ事業法」という法律上タバコと認められるので
タバコとして販売できる。
日本では8年前から販売が始まり、
2016年頃から、一番シェアが高い銘柄では世界中の96%を日本で
消費するほど急速に普及してきました。
Q どのくらいの人が加熱式タバコを吸っている?
⇒・2020年に中国労働衛生協会で健診を受けられた4万5485人のデータを分析したところ、
男性の36.5%、女性の10.8%が喫煙者だったが、
そのうち男女とも喫煙者の3割近くが
加熱式タバコを使っていることが判明。
2020年度の日本のタバコ製品の販売数からみても、
加熱式タバコはタバコ販売全体の3割のシェアなので、
それに相応する数字。
Q 電子タバコとはどう違う?
⇒電子タバコはニコチンの溶液そのものを蒸気にして吸い込むもので、
日本では薬機法という法律で規制されており、
現在、ニコチン入りの電子タバコで承認を得ているものはない。
日本でいわゆる電子タバコと称されているのは
ニコチンが入ってない溶液を吸うもので、タバコ製品には該当せず。
一方、加熱式タバコはタバコの葉を使用するので、
「たばこ事業法」上許されることになる。
Q 加熱式タバコ使用割合が最も高い年齢層や性別などで特徴は?
⇒男性では30代で一番多く喫煙者の約3割、
女性では20代で一番多く喫煙者の約4割が使用。
Q 紙巻タバコと加熱式タバコ両方を喫煙している人を
デュアルユーザーと呼ぶそうですが、どういう方に多いですか?
⇒やはり男女ともに20代など若年者で割合が高い。
Dual userは禁煙区域では加熱式タバコを使い、
喫煙可の区域では紙巻きタバコを使うという風に使い分けている。
Q なぜ加熱式タバコが広まっているのでしょう?
⇒喫煙環境の変化ですね。
2018年に健康増進法の一部を改正する法律が成立し、
2年前の4月より全面施行となりました。
すなわち、「多数の者が利用するすべての施設」に受動喫煙防止義務が課せられ、
原則屋内全面禁煙となった。
喫煙はマナーからルールに代わり、
紙巻きタバコが吸いにくい環境が増えたため。
加熱式タバコもタバコですのでこの法律が適用されますが、
飲食店では「加熱式タバコ専用喫煙室」で飲食可になっており、
ある意味抜け道的な印象で使用が増えたのかも。
Q 若い人で加熱式タバコの使用が多い理由はどう考えられている?
⇒若者がガジェット好き(ちょっと気の利いた小道具や装置のこと)であることもあるが、
2019年の調査によると、
「加熱式タバコを吸った理由」で一番多いのは、
「紙巻きタバコよりも害が少ないと思ったから」で、
次いで多いのが「タバコの煙で他人に迷惑をかけるのを避けるため」でした。
30代あるいは40代の方は一般的に子育て世代であるため、
家庭環境に配慮して加熱式タバコを選択したのかもしれない。
同じく禁煙を試みた人を対象とした禁煙方法の調査では、
「加熱式タバコあるいは電子タバコの使用」が最も多く、
禁煙ツールの一つと考えて使っている方もかなり多いのではないかと思われますが、
禁煙のツールとしてはお勧めできません。
Q.実際のところ、健康への影響はどうなのでしょうか?
⇒主流煙の成分では、簡単に言えばタバコの三大有害物質のうち
一酸化炭素のみはほとんど無くなったが、
ニコチンはほぼ同じかやや多く、タールは7割に減といったところ。
化学成分を分析した結果から、他の発がん物質も少なめになっているようです。
ただ問題なのは、紙巻きタバコには無かった有害重金属や化学物質が
何百種類も入っており、
そういうものに長期さらされることによる健康への影響は、
販売開始からの年月が浅いため明らかになっていない。
また、タバコの煙の健康被害は、さらされる量を問わず、
少量でも有害で、安全なレベルというものがないとされています。
Q.加熱式タバコでも、やはり喫煙なんだという意識を持たないといけないということですね?
加熱式タバコ喫煙者に対して、宮田先生からメッセージをお願いします。
⇒今のところ加熱式タバコによる喫煙者本人へのリスクは、
紙巻きタバコとほとんど変わらないと言われていますし、
これから未知の健康被害が生じる可能性もあります。
これらの商品の注意書きにも書いてある通り、
タバコ関連の健康被害を軽減する一番の方法は紙巻きタバコも、
加熱式タバコも両方止めることです。