出演:独立行政法人 広島産業保健総合支援センター
寺村 清美さん
Q 実際に治療と仕事の両立に迫られている人はどのくらいいる?
⇒令和元年6月28日独立行政法人 労働政策研究・研修機構が行った
「病気の治療と仕事の両立に関する実態調査」によると、
「糖尿病」の患者がいるという企業割合は、およそ4分の1の25.2%。
ついで、「がん」、「心疾患」、「脳血管疾患」、
「難病」、「肝炎」となっている。
・正社員の規模別にみると、いずれの該当疾患においても、
おおむね規模が大きくなるほど、
疾患を抱える社員が「いる」とする割合が高くなる傾向にある。
・複数回答ではありますが、罹患した社員の年齢層は、
「がん」「脳血管疾患」「心疾患」「肝炎」「糖尿病」
いずれも、50代、60代、40代が上位。
なお、難病は、年齢層が広範に分布している。
Q 仕事と治療の両立は実際、うまくいっている?
⇒別のがん患者を対象としたアンケート調査では、
「就労意欲がある」と回答した方が92.5%。
「依願退職した」30%、「解雇された」4%。
仕事と治療の両立はまだまだ難しい現状。
Q 実際、治療しながら働き続ける上で、当事者はどんな悩みを感じている?
⇒病気を抱えている当事者の方は、
病気のことを会社にうまく伝えられない。
病気を伝えるとやめさせられるのではないか。
治療と仕事の両立ができるか不安。
職場の協力や理解が得られるだろうかなど悩みを抱えている
Q 仕事を辞める選択をされた方も少なくない。どんな理由で退職している?
⇒「病気の治療と仕事の両立に関する実態調査」では、
病気を抱える当事者にも調査したところ、
現在も同じ勤め先で勤務を続けている、というのが8割近く。
一方、退職した割合はおよそ2割。
退職した人の内訳をみると
「そもそも休職制度がない・適用されない」という割合が最も高い。
その他、疾患関連の退職理由として、
「仕事を続ける自信がなくなった」
「会社や同僚、仕事関係の人々に迷惑をかけると思った」
「治療・療養に専念するため」
「治療や静養に必要な休みをとることが難しかった」
「残業が多い職場だったから」などが上位
Q 治療しながら仕事をする社員を抱えている企業側にも、様々な悩みがあるのでは?
どんな課題が明らかになっているのか?
⇒病気の治療と仕事の両立支援制度の課題は、
「休職者の代替要員・復帰部署の人員の増加が難しい」が54.3%ともっとも多い。
次いで、「休職期間中の給与保障が困難」
「治療と仕事を両立するための制度が十分でない」
「治療のための休みをとりやすい体制確保が困難」
「柔軟な労働時間制度の設計が困難」
「病状・後遺症に対する配慮が難しい」
「休職から復帰後の仕事の与え方・配置が困難」などの順。
Q 会社の規模によって課題に違いがありそう。
⇒・正社員規模別にみると、おおむね規模が大きくなるほど、
「柔軟な労働時間制度の設計が困難」
「病状・後遺症に対する配慮が難しい」
「休職から復帰後の仕事の与え方・配置が困難」
「職場の上司・同僚への指導」「再発防止策」などの割合が高くなる。
・一方、おおむね規模が小さくなるほど、
「休職期間中の給与保障が困難」などの割合が高い
Q この課題を解決する一歩ということで、
ことし1月に2つの保険会社と協定を結ばれたそうですね。
どんな狙いがあるのでしょう?
⇒広く多くの人へ知ってもらうため、広島産業保健総合支援センターは、
広島県内における労働者の健康確保と産業保健の活性化を図ることを目的に
健康経営への取り組みを支援している保険会社連携協定をした。
双方が緊密な相互連携を図り、
双方の資源を活用した事業に協働で取り組むことにより、
労働者の健康確保と産業保健の活性化を図ることを目的。
Q 今後、具体的にはどんな支援を目指していますか?目指している展開は?
⇒治療と仕事の両立支援に関する普及促進・啓発及び企業訪問支援。
保険会社が顧問先の企業に行った際、両立支援が必要と感じた企業、
もしくは、今後に備えて働きやすい選ばれる企業になるために、
治療と仕事の両立支援の取り組みを進めたいと思う企業の
橋わたししてもらい、働きやすい広島の企業を増やしていきたい。
Q 最後に、相談できる窓口を教えてください。
⇒是非、産保センターの無料支援をご利用してください。
また、県内の総合病院を中心に18機関の病院に、
出張相談窓口を設置している。
受診日に合わせて、産保センターも訪問し、
相談対応しているので身近な相談しやすい場所をご利用ください。