出演:広島市健康福祉局保健部健康推進課
岩佐 采茄さん
Q 働く世代が頭に入れておきたい「2つの感染症」ということですが、どんな感染症ですか?
⇒まず一つ目は、近年全国的にも感染者が増え続けている「梅毒」です。
Q「梅毒」というと、昨年末、感染者数が過去最多を更新したというニュースもありました。
広島市の状況はどうなんですか?
⇒広島市でも、梅毒患者の報告数は急増。
おととしには、統計を取り始めて以降、過去最多となる317件の報告がありました。
現在、去年の報告数を集計中ですが、おととしと同程度となる見込みです。
Q そもそも梅毒とはどういった病気なんでしょうか?
⇒梅毒トレポネーマという細菌による感染症です。
口や性器などの粘膜や皮膚から感染するため、性的な接触が主な感染経路です。
Q 感染するとどんな症状が出るのでしょうか?
⇒感染すると、約1か月で、性器や口の中などの感染した場所に、
痛みやかゆみのないできものやしこりなどができます。
また、感染後3か月程度たつと、手のひらや足の裏などを含む
全身に多彩なできもの、発疹ができます。
治療をしなければ、感染後数年で、心臓や血管、神経などに異常が現れ、
命に関わることもあります。
妊娠中に感染すると、胎児に感染し、死産や早産につながったり、
生まれた子どもが生後すぐに皮膚や骨の異常などの症状が出ることがあります。
Q 梅毒を予防するためにはどうしたらいいですか?
⇒梅毒を含む性感染症の予防には、コンドームの使用が不可欠です。
また多数の相手と性的接触をもつと感染リスクがそれだけ高まります。
もし心当たりがある場合は、早めに皮膚科や泌尿器科、婦人科などを受診し、
検査を受けることが大切です。
また、症状はないけど梅毒に感染しているかもと不安なときは、
各区の保健センターで行っている、事前予約制の無料・匿名の検査を受けることもできます。
詳しくは、広島市のホームページや各区の保健センターへ御確認ください。
なお、検査や治療は、ぜひパートナーの方と一緒に受けてほしいです。
Q もう一つの感染症はなんですか?
⇒妊娠中の女性が感染すると生まれてくる赤ちゃんに障害が起きる恐れがある「風疹」です。
風しんウイルスによって起こる感染症で、
患者のくしゃみや咳などによって飛び散ったウイルスを吸い込むことなどで感染します。
通常、2週間から3週間の潜伏期間の後に、
発熱や発疹、関節の痛みなどの症状が見られます。
Q 風疹は、乳幼児が受ける予防接種に含まれていますよね。
⇒おっしゃる通り、現在は、子どもの予防接種の対象になっていて、
1歳から2歳になるまでの間に1回目を、
就学前の年長の時に2回目の接種を受けることになっています。
風疹は、予防接種により防ぐことができる感染症なので、ぜひ受けてほしいです。
Q 数年前に全国で大流行したと聞きましたが、大人もかかるものなのでしょうか?
⇒大人がかかることもあります。
一般的に、子どもの場合は、症状も軽く数日で回復しますが、
大人の場合は発熱や発疹の期間が長く、関節痛がひどくなる場合があります。
感染力はインフルエンザの2~4倍で、自覚症状が出る前から人に感染させるため、
電車内や職場など人が集まる場所で、多くの人に感染させる可能性があります。
Q 家族はもちろん、職場など、身近に妊娠中の方がいる場合には心配ですね。
⇒20週頃までの妊娠初期の女性が風しんにかかると、
生まれてくる赤ちゃんに難聴や心疾患など、
先天性の疾患である「先天性風しん症候群」を引き起こす恐れがあります。
そのため、女性はもちろん、パートナーやご家族、
周囲の方々も接種歴の確認をしていただきたいです。
接種歴があるという方も、時間の経過と共に免疫が低下する方もいますので、
その場合は改めて予防接種を受けておくことが大切です。
また、接種歴が不明な方の場合は、抗体検査や必要に応じて予防接種を受けましょう。
Q もし妊娠中に免疫が低下していることが分かった場合は
どうしたらいいのでしょうか?
⇒妊娠中は、予防接種を受けることができません。
その場合には、人込みを避けるなど、極力、風しんにかからないようにしましょう。
Q 検査や予防接種は費用が掛かると思いますが、公的な支援はありますか?
⇒広島市では、妊娠を希望する女性や、妊婦や妊娠を希望する女性と
同居する家族の方に対する無料の風しん抗体検査を実施しています。
また、40代後半~60代前半の男性については、
公的な風しんの予防接種の機会がなかったため、
風しんの免疫を持っていない人が多いといわれています。
対象の方は、来年3月末までの間に限り、
1度だけ無料で抗体検査を受けることができます。
詳しくは広島市のホームページや各区の保健センターへお問い合わせください。